<内容紹介>
　一元的ではない関東における後期・終末期古墳の様相を再検討
関東各地における後期・終末期古墳群のあり方を集成し、その独自性、個性ゆたかな地域性に注目しながら、当時の関東地方における地域社会の自立性を再評価するとともに、その意義を検討する。また、地域首長間交流もあきらかにしながら、根強く残るヤマト王権による一律・一元的な全国支配という考え方に一石を投じる意欲的なシンポジウムの記録集。シンポジウム開催後、非公開で行われた討論会の模様も再録し、これらの検討を通して、関東の古墳時代後期における国家形成過程を理論的に検討し、枠組みをあたえる試みを提示した必見の1冊。
<推薦します>
　古墳時代の研究は、地域に根ざした事例分析から多くの成果をあげてきた。本書には、古墳時代後期・終末期の関東の古墳群にかんする最新の考察や討論の記録が収められていて、この地域の古墳時代の特性と多様性を臨場感豊かに知ることができる。加えて、古墳群分析の方法論、文献史からのアプローチ、国家形成論の比較などを扱った論考も盛られており、日本列島そして世界まで視野に入れた内容となっている。古墳だけで国家形成を論じることに無理があるというのは、そのとおりである。しかし、この複雑で多様な古墳のあり方を説明できない国家形成論なら、考古学にとってはいささか魅力を欠いたものになるかもしれない。たかが古墳、されど古墳。列島の東西南北の違いに留意した複眼的な古墳時代研究の視点を養うためにも本書から学ぶことは多い。　
福永伸哉(大阪大学大学院文学研究科教授)
◆目　次◆
　佐々木憲一　はじめに
第I部　基調講演 　 　
　和田晴吾　古墳群の分析視覚〜群集墳を中心に
　白井久美子　関東の後・終末期古墳群の特性
第II部　各地からの報告 　 　
　草野潤平　下野における後期・終末期古墳の地域設定と動向
　深澤敦仁　上野地域における群集墳構造の推移
　太田博之　北武蔵における後期古墳の動向
　松崎元樹　多摩川流域および周辺における後・終末期古墳群の特性と地域構造　　
　萩原恭一　下総地域における後期群集墳
　小沢　洋　上総における古墳群構成の変化と群集墳
第III部　シンポジウム　関東における後期・終末期古墳群の諸相　　 　 　
　川尻秋生　7世紀東国を考える一視点
　パネルディスカッション　第I部
　パネルディスカッション　第II部
　佐々木憲一　国家形成期における関東・まとめにかえて
　吉村武彦　おわりに