<開催趣旨>
　今年は、小田原北条(後北条)氏が豊臣秀吉に屈した天正18年(1590)から420年の年にあたります。この年、関東諸城は秀吉率いる軍勢に前に落城あるいは開城し、小田原北条氏約100年にわたる治世は終止符を打ちました。その後、関東には徳川氏が入り、江戸幕府の礎を築くべき政策とともに、様々な普請事業が進められます。その中には小田原北条氏の技術を引き継いで実施されたものも少なくありません。例えば、「総構」「障子堀」の敷設も小田原北条氏より広まったとの説があり、小田原北条氏配下の石工は徳川氏に厚く迎遇され、江戸城築城に際して活躍しました。
　そして今年、小田原城で初めての小田原北条氏時代の石垣が検出されました。この石垣の検出は、「土の城」ともいわれる小田原城の性格を考えるとともに、小田原北条氏の築城・土木技術を再考する大変重要な成果となりました。
　近年の発掘調査では、関東各地で戦国時代の石垣が確認されている状況もあり、これら関東諸城の発掘調査事例を取り上げ、小田原北条氏の城造り・都市造りをテーマに考古学的に小田原北条氏の築城技術を考えてみたいと思います。(研究会パンフレットより)
<目次>
萩原三雄　戦国期東国の築城技術
佐々木健策【事例報告1】小田原本城にみる築城技術
池谷初恵【事例報告2】伊豆・東駿河の城郭
水本和美【事例報告3】江戸城周辺の最近の調査成果から
宇留野主税【事例報告4】北条氏照の城と城下‐滝山城と八王子城-
石川安司【事例報告5】北武蔵の築城技術
秋本太郎【事例報告6】上野国における小田原北条氏の影響
出居　博【事例報告7】唐沢山城跡などに見る小田原北条氏の関与
松葉　崇　相模国所在の城館跡に見る築城技術
青木文彦　岩付城に見る小田原北条氏の影響
留野主税　常総地域における古河公方の城と小田原北条氏の城宇
井上哲朗　房総諸勢力の築城技術
佐々木満　武田氏の築城技術
伊藤啓雄　越後上杉氏の築城技術