<書評>
・青木敬様　季刊考古学124号(2013.7)
<内容>
　本書は古墳の被葬者を納めた石棺自身の規模・形態・材質に表象される階層構造(石棺秩序)を復元し、石棺という情報(階層構造・形態・製作技術)が各地にどのように伝播していくのか、祖形となった木棺や波及先の在地の木棺の形態も考慮しながらその様相を論じたものである。
　具体的には割竹形石棺の成立と各地への石棺製作技術の波及、倭王権が採用した竜山石製長持形石棺と地域首長が採用した舟形石棺の石棺秩序の比較検討、舟形石棺と舟形木棺との関係、長持形石棺から引き継がれ新に加えられた要素を基に成立した家形石棺の石棺秩序の復元と、各地に波及した畿内系家形石棺の位置づけ、さらにこれらの検討から倭王権と地域首長との関係を考察した内容となっている。國學院大學学位論文に加筆し刊行。
<目次>
序　章　墳墓における石棺研究の意義
　第1節　石棺の機能に関する研究
　第2節　石棺と他界観に関する研究
　第3節　木棺研究の成果と石棺研究の接点について 資料の定義を中心に
　第4節　墳墓の編年と用語について
第1章　讃岐における石棺の創出と伝播
　第1節　研究史
　第2節　石棺の分類と編年の再検討
　第3節　讃岐における石棺の創出
　第4節　讃岐産石棺製作技法と埋葬法の伝播
　まとめ
第2章　竜山石製長持形石棺の石棺秩序
　第1節　研究史
　第2節　竜山石製長持形石棺の分類
　第3節　長持形石棺の形式と変遷
　第4節　長持形石棺の階層構造
　第5節　近畿圏の長持形石棺と古墳群の対応
　まとめ
第3章　舟形石棺の石棺秩序 長持形石棺1類の石棺秩序との比較を中心に
　第1節　丹後地域　　第2節　越前地域
　第3節　東北・関東地方　　第4節　毛野地域
　第5節　出雲地域　　第6節　九州地方
　第7節　地域様相からみた長持形石棺と舟形石棺
第4章　畿内系家形石棺の成立と石棺秩序の変容
　第1節　家形石棺の研究史
　第2節　家形石棺研究の成果と課題
　第3節　家形石棺の分類と編年
　第4節　畿内における家形石棺の石棺秩序　　第5節　山陽地方の家形石棺
　第6節　九州地方　　第7節　山陰地方の家形石棺
　第8節　伊勢地域の家形石棺　　第9節　濃尾地方の家形石棺
　第10節　駿河・伊豆地域　　第11節　東北・関東地方
　第12節　羽咋地域　　第13節　畿内系家形石棺の成立と波及
第5章　製作技術からみた石棺の系譜
　第1節　　製作技術についての研究史
　第2節　　讃岐の石棺と長持形石棺
　第3節　　4,5世紀の舟形石棺・長持形石棺3類の製作技術
　第4節　　家形石棺の製作技術
　第5節　　課題と展望
終　章　石棺秩序と古墳時代社会