<内容>
　著者は三十数年にわたって川崎市教育委員会で文化財調査・保護と博物館の業務に関わり、その傍ら考古学に関する論文を発表、定年後も長年の経験を活かして研究活動を継続してきた。(定年退職後の2005年に第30回藤森栄一賞を受賞)
　本書は還暦以降の9年間に執筆した論文のなかから、縄文時代3件、弥生時代1件、古墳時代2件、奈良・平安時代2件を選んで編集した。内容的には縄文・弥生時代の住まいや集落論、古墳にかかわる祭祀論、横穴簿に描かれた線刻画の絵解き論、律令期の生業論や駅家・道路論など多岐にわたる。個々の遺跡を詳細に分析し、遺構・遺物が語る歴史像を大胆に、あるいは緻密に復元した地域考古学の実践的な研究書である
<目次>
第1章　定説化した7回拡張住居跡を再検証する　埼玉県上福岡遺跡の縄文前期D地点住居跡
第2章　初山遺跡の縄文中期ムラと柄鏡形住居址の語り　神奈川県川崎市初山遺跡の西方域遺構群
第3章　縄文ムラの広場に建つ柄鏡形敷石遺構を復元する　東京都八王子市小田野遺跡のSI08・SI10遺構
第4章　五平(状)柱を主柱穴に据えた弥生期の竪穴住居跡　弥生中・後期における調査・研究の現状
第5章　古墳研究をめぐる定点考・三題
第6章　横穴墓に描かれた線刻画を絵解きする　早野・西谷戸・王禅寺白山の三横穴墓に挑む
第7章　多摩川下流域における古代律令期の生業基盤を想う　福島県磐城郡白田郷に関する御高論にふれて
第8章　まぼろしの大井駅家をめざして小高駅家を出立する
あとがき　宴のあとのひとり旅