<内容>
-関東の複雑な7世紀史に迫るコンパクトな1冊-
　7世紀と言えば、推古、舒明、皇極、孝徳、斉明、天智、天武、持統天皇の御世。飛鳥寺の塔もすでに596年に完成しているとき。関東の一部の地域では7世紀初頭でも、二重周濠を伴う70m級前方後円墳を後生大事に築造していた。そんな関東でも古墳の築造はやがて収束に向かい、仏教寺院建立の動きがはじまる。しかしながら、関東各地においてそのプロセスは非常に違ったようだ。前方後円墳→方墳→寺院とスムーズに変遷をたどれる群馬県山王廃寺や千葉県龍角寺はむしろ例外的なケース。本書では、古墳の専門家と寺院の専門家を一堂に集め、そういった地域的差異を明らかにするよう努めた。考古学リーダー12『関東の後期古墳群』の姉妹編としてご活用いただきたい。
<推薦文>
-関東地方の豊かな古代へのアプローチ-
　古墳の終焉と仏教寺院の成立は、各地の7世紀を考える上で重要な鍵となっている。とりわけ関東地方では、後期・終末期の古墳が発達し、地域的な違いも保ちつつ、それぞれが新たな時代に向け展開していった。古墳と寺院の接続についても多様なあり方が把握されている。この転換の背景には、在地勢力の消長があり、さらには国家の地方政策や宗教政策があった。この課題に取り組むために、本書では第�吃瑤硫歛蠍Φ罎砲�いて、大局的な見地から古墳の終焉が論じられ、文献史学から寺院の成立についても位置づけがおこなわれている。そして、地域の実像に迫るため、第�局瑤砲�いて各地の重要な事例がまとめられ、さらに第�敬瑤離轡鵐櫂献Ε爐鯆未靴董�共通性や違いが把握されている。本書を通読することにより、たいへん豊かな関東地方の7世紀史が浮かび上がってくるばかりでなく、日本列島における7世紀の転換を探る重要な糸口がこの地域の歴史にあることが明瞭となる。
京都府立大学教授　菱田哲郎
<目次>
佐々木憲一　古墳から寺院へ　序にかえて
第1部　課題研究
　1　小林三郎　関東における古墳の終焉
　2　白井久美子　関東の後期・終末期古墳
　3　土生田純之　横穴式石室から見た古墳の終焉
　4　川尻秋生　古代王権と仏教・寺院
第2部　地域研究
　1　高井佳弘　上野国における寺院建立の開始
　2　田中広明　武蔵国の終末期古墳と地域の編成
　3　眞保昌弘　「下毛野」と「那須」の古墳から寺院・官衙へ
　4　稲田健一・佐々木憲一　常陸国の7世紀 古墳を中心に
　5　山路直充　龍角寺の創建
第3部　シンポジウム
古墳から寺院へ　関東の7世紀を考える
佐々木憲一　あとがき