【書評】
・石橋　宏 氏　2015年5月　六一書房書評コーナーでご覧いただけます

【内　容】
　本書は,考古学と周辺諸学を含めた古代国家形成論を丹念に整理した点に特色をもつとともに,栃木県のしもつけ古墳群をケーススタディとして東日本各地の様相と対比することで,東国における6〜7世紀史の構築をめざす。まず,埋葬施設の諸要素に地域間交流の姿を見出し,国家成立に向けての重要な要因になる,という方向性を示す。次に,墳丘規模からみた階層性をもとに,社会構成モデルを提示し,古墳の動向からみた律令国家形成過程における五つの画期の設定に至る。ただし,東国各地の歩みは共通性と独自性を併せもち,その道程は,5世紀後半を画期とする到達点である連合体制を基礎とするシステムをその枠組みに取り込んだ点において,古墳時代における各地域の実態に即したものであった。國學院大學博士論文に加筆、刊行。
【著者略歴】
小森　哲也(こもり　てつや)
　1955年　栃木県芳賀郡市貝町田野辺生まれ
　1978年　宇都宮大学教育学部社会科専攻卒業
　1978年　栃木県宇都宮市公立学校教員
　1983年　栃木県埋蔵文化財センター
　1995年　栃木県立なす風土記の丘資料館
　1999年　栃木県宇都宮市公立学校教員(2011年退職)
　2014年　國學院大學大学院文学研究科史学専攻　博士課程後期修了　博士(歴史学)
　(主要論文)
　「宇都宮市笹塚古墳出土円筒埴輪の年代的位置付け」『峰考古』第2号　宇都宮大学考古学研究会1979年
　「栃木県内古墳出土遺物考�機‥器靴諒兪�」『栃木県考古学会誌』第8集　栃木県考古学会　1984年
　「下野の首長墓」『峰考古』第8号　久保哲三先生追悼号　宇都宮大学考古学研究会　1990年
　「真岡市神宮寺塚古墳出土の塼をめぐって」(共著)『古代』89号　早稲田大学考古学会　1990年
　「地域の概要　下野」『前方後円墳集成』東北・関東編　山川出版社　1994年
　「各地域における前方後円墳の終焉　栃木県」『前方後円墳の終焉』雄山閣　2010年
　「地域間交流としての石棺式石室―中九州・山陰そして東国の動向―」　『日本考古学』第34号　2012年
　「横穴式木室考―先行研究の整理と分布・構造からみた地域間交流―」『考古学雑誌』第97巻4号　2013年
【目　次】
序　章
　第1節　研究の背景と目的
　第2節　研究の方法
第1章　先行研究の整理
　第1節　古墳時代と古代国家形成論
　第2節　評の成立
　第3節　擬制的同祖同族関係
第2章　しもつけ古墳群にみる東国社会の一側面
　第1節　しもつけ古墳群の概観
　第2節　切石使用横穴式石室の編年
　第3節　低位置突帯埴輪
　第4節　群集墳・集落の動向
　第5節　前方後円墳の終焉と終末期古墳
第3章　遺跡・遺物が語る律令国家への道程
　第1節　須恵器生産の開始と神宮寺塚古墳の「塼」敷横穴式石室
　第2節　破壊された石室
　第3節　那須国造碑と『日本書紀』持統紀新羅人東国移配記事
　第4節　立評と西下谷田遺跡そして下野薬師寺の建立
第4章　埋葬施設にみる広域地域間交流の実態とその背景
　第1節　石棺式石室
　第2節　横穴式木室
　第3節　地下式横穴墓
　第4節　「地域間交流論」とその周辺
第5章　東国各地の首長墓の地域相にみる独自性と共通性
　第1節　6〜7世紀における東国各地の首長墓の動向
　第2節　東国各地の最後の前方後円墳と終末期古墳
終　章　古墳時代終末期から律令国家成立期の東国
　第1節　東国からみた6〜7世紀史の素描
　第2節　課題と展望
あとがき
初出一覧