主な内容　※発行元案内分より
富士市指定史跡の千人塚古墳は、愛鷹山南西麓に広がる須津古墳群に所在する墳径約 21.0m、周溝幅約 3.0m の円墳です。2008 年に実施した保存活用目的調査により、全長 11.4m以上の無袖形横穴式石室内から、装身具、武器、工具、馬具、土器などの遺物が出土しました。2組の馬具のうち、金銅製吊金具付横長心葉形轡には、仏教意匠とみられる毛彫文様が見られます。同じく須津古墳群内に位置する中里大久保古墳、中里 K-97・98・99 号墳出土遺物の再整理成果もあわせて検討した結果、当古墳群の集団が、浮島沼ラグーン周辺における水陸交通や馬牧、複合的手工業・水産加工拠点の管理、軍備を担っていたと考えられます。愛鷹山南麓には総数1,000 基に及ぶ大型群集墳が広がっており、千人塚古墳に埋葬された主は、7 世紀中葉におけるこの集団の指導者とみられます。

【目次】
第 1 章 調査経緯と経過
　第 1 節 発掘調査の経緯と経過
　第 2 節 整理作業の経緯と経過
　第 3 節 調査の体制
第 2 章 立地と環境
　第 1 節 地理的環境
　第 2 節 歴史的環境
　第 3 節 須津古墳群の概要
第 3 章 千人塚古墳の調査成果
　第 1 節 墳丘
　第 2 節 埋葬施設
　第 3 節 出土遺物
第 4 章 中里 K 支群の再整理
　第 1 節 古墳をめぐる環境
　第 2 節 中里大久保古墳(中里 K-95 号墳)
　第 3 節 中里 K-97 号墳
　第 4 節 中里 K-98 号墳
　第 5 節 中里 K-99 号墳
　第 6 節 出土地不明の遺物
第 5 章 考 察
　第 1 節 須津古墳群における馬具副葬古墳被葬者の性格 (大谷 宏治)
　第 2 節 愛鷹山古墳群の被葬者集団とその生産基盤 (藤村 翔)
　第 3 節 千人塚古墳石室奥壁の刻文について (井上 卓哉)
第 6 章 総 括