第11回 2013.12.11
亀ヶ岡式土器成立期の研究 東北地方における縄文時代晩期前葉の土器型式発行元: 早稲田大学総合研究機構 先史考古学研究所 2010/10 刊行
評者:小林 克 (秋田県埋蔵文化財センター)
亀ヶ岡式土器成立期の研究 東北地方における縄文時代晩期前葉の土器型式
著書:小林 圭一 著
発行元: 早稲田大学総合研究機構 先史考古学研究所
出版日:2010/10
価格:¥8,382(税込)
目次序 章
第1節 本論の目的と構成
第2節 本論の時間的範囲と型式区分
第3節 大洞B・BC式土器の器種分類
第4節 東北地方の地域区分
第5節 晩期前半の主要遺跡
第1部 大洞B・BC式土器研究の問題の所在
第1章 亀ヶ岡式土器成立前史-瘤付土器の概要-
第1節 研究史
第2節 土器の器種構成と用途
第3節 文様の特徴
第4節 型式と編年-年代的変遷-
第5節 14C年代測定データ
第6節 瘤付土器の分布と他型式との関係
第2章 東北中部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 高瀬山遺跡出土の晩期初頭の土器
第3節 後・晩期の境界をめぐる諸問題
第4節 後期三叉文の成立過程
第5節 大洞B1式の装飾深鉢B類の特徴
第6節 結 語
第3章 東北北部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 東北北部の晩期初頭の研究史
第3節 一括性の高い資料の検討
第4節 結 語
第4章 「雨滝式」をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 山内清男氏による大洞B・BC式の設定と再細分
第3節 芹沢長介氏による「雨滝式」の提唱
第4節 「雨滝式」の問題の波及
第5節 曲田?遺跡と八幡遺跡に対する評価
第6節 大洞BC式細別化の動向
第7節 大洞BC式の一括性の高い資料の検討
第8節 結 語
第2部 縄文時代晩期注口土器の研究
第5章 東北北半における縄文時代晩期前葉の注口土器
第1節 はじめに
第2節 研究史
第3節 注口土器の分類と編年
第4節 新井田川・馬淵川流域の注口土器の変遷
第5節 東北北半出土の注口土器の様相
第6節 部位毎に見た系統的変遷
第7節 結 語
第6章 縄文時代晩期初頭注口土器の一様相
第1節 はじめに
第2節 沢山遺跡の概要と注口土器出土の経緯
第3節 沢山遺跡出土の大型注口土器について
第4節 晩期初頭の注口土器C類について
第5節 沢山遺跡出土大型注口土器の編年的位置
第6節 青森平野における晩期前半期の遺跡群
第7節 結 語
第7章 東北中部における縄文時代晩期前葉の注口土器
第1節 はじめに
第2節 宮田遺跡の概要
第3節 宮田遺跡採集の注口土器
第4節 釜淵C遺跡出土の注口土器
第5節 編年的位置の検討
第6節 結 語
第3部 大洞B・BC式土器研究 各論
第8章 大洞B式「ノ字文」の系譜
第1節 はじめに
第2節 「ノ字文」の特徴
第3節 「ノ字文」の系譜とその分布
第4節 他器種の文様との相関性について
第5節 「野脇類型」深鉢の抽出
第6節 結 語
第9章 岩手県曲田?遺跡E?-011住居跡出土土器の再検討
第1節 はじめに
第2節 曲田1遺跡の概要
第3節 E3-011住居跡の様相
第4節 E3-011住居跡出土土器の検討
第5節 考 察
第6節 結 語
第10章 大洞BC式に固有の「入組三叉文高坏」について
第1節 はじめに
第2節 「仙北湖沼地帯」の概要
第3節 「入組三叉文高坏」の特徴
第4節 「入組三叉文高坏」を構成する属性の検討
第5節 「入組三叉文高坏」の年代的変遷
第6節 「入組三叉文高坏」の分布
第7節 「仙北湖沼地帯」に特徴的な土器群
第8節 結 語
第11章 縄文時代晩期初頭に固有の「眼鏡状突起」について
第1節 はじめに
第2節 「眼鏡状突起」が付された土器
第3節 「眼鏡状突起」の消長とその意義について
第4節 結 語
第12章 大洞B2式磨消文様の一類型-「川原類型壺形土器」の文様分析-
第1節 はじめに
第2節 川原遺跡出土の壺形土器について
第3節 川原遺跡出土壺形土器の編年的位置について
第4節 「川原類型壺形土器」の類例
第5節 「川原類型壺形土器」の消長
第6節 大洞B式壺形土器の磨消文様
第7節 結 語
第13章 東海・近畿地方における縄文時代後期後葉〜晩期前半の東北系土器
第1節 はじめに
第2節 東北地方の縄文後期後葉〜晩期前半の概要
第3節 東海地方の主要遺跡の検討
第4節 近畿地方における東北系土器の様相
第5節 結 語
終 章
第1節 大洞B・BC式土器研究の総括
第2節 「雨滝式」についての今日的理解
第3節 大洞B・BC式土器の14C年代測定データ
第4節 今後の課題
亀ヶ岡式土器の成立過程の解明に迫った意欲的な論考
山内清男による1930年の「所謂亀ヶ岡式土器の分布と縄紋式土器の終末」は、その後日本先史考古学が柱に据えることになる、“型式編年”の方法論的有効性を示した、前世紀前半の画期的な論文であった。この論文の延長には著名な“ミネルヴァ論争”があり、日本の先史文化全体の評価に関わる、“常識”的学問に対する“科学”としての考古学の挑戦であったことは良く知られている。そうした背景もあり、晩期土器論、なかでも亀ヶ岡式土器をめぐっては、単に型式編年上の問題のみ研究が進められたのではない。いわば北ないし東日本に展開した“先史”と、西日本の“原史”ないし“有史”との関係性の究明という遠大な目標が、無意識的にも存在したことは20世紀の研究史を振り返れば確認できることである。数々に生み出された議論はいわば時間単位、空間指標としての型式認定をめぐって交わされながら、東と西を結ぶ広域のホライズンを希求する流れのなかで展開した。『亀ヶ岡式土器成立期の研究』もそうした流れのなか、山内の発表から80年目に発刊された、21世紀初頭での到達点である。次のような構成からなる。
序 章
第1部 大洞B・BC 式土器研究の問題の所在
第1章 亀ヶ岡式土器成立前史−瘤付土器の概要−
第2章 東北中部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第3章 東北北部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第4章 「雨滝式」をめぐる問題の所在
第2部 縄文時代晩期注口土器の研究
第5章 東北北半における縄文時代晩期前葉の注口土器
第6章 縄文時代晩期初頭注口土器の一様相
第7章 東北中部における縄文時代晩期前葉の注口土器
第3部 大洞B・BC 式土器研究 各論
第8章 大洞B式「ノ字文」の系譜
第9章 岩手県曲田1遺跡E3−011 住居跡出土土器の再検討
第10 章 大洞BC 式に固有の「入組三叉文高坏」について
第11 章 縄文時代晩期初頭に固有の「眼鏡状突起」について
第12 章 大洞B2 式磨消文様の一類型− 「川原類型壺形土器」の文様分析−
第13 章 東海・近畿地方における縄文時代後期後葉〜晩期前半の東北系土器
終 章
著者が2002年から発表してきた論文10編と新たに書き下ろされた3編、そして序章と終章を加えた構成である。収録された論文は今世紀になってからのものであるが、著者の亀ヶ岡式土器研究は1982年に始まっており、収録論文の最も早いものでも背景には20年間の研究の積み重ねがある。
特に『第4章 「雨滝式」をめぐる問題の所在』は、本書をまとめるにあたっての著者の中心的な問題意識が込められた章である。30年間の著者の研究歴においても、岩手県曲田1遺跡など新たな資料が加えられたことで、研究の原動力となった課題を扱い、今回、新たに書き起こされている。「雨滝式」の問題に関しては、提唱者により大洞B式のメルクマールである三叉紋とBC式の羊歯状紋交替に関わる山内モデルへの疑義、すなわち「陰刻から陽刻への変化」に対する疑義が述べられたほか、両紋様の1個体での併存なども認められていた。そしてBC式が、当初から大洞貝塚出土資料に欠けた部分を補う形で設定されたことも遠因として、様々な議論が提出されてきた。かつてには、後期末入組紋からの異なる二系統の紋様変化が説明された経緯もある。著者の学生時代の研究が、後期末の土器論に焦点を合わせて開始されたこととも微妙に関わっていることであろう。
「雨滝式」設定から数えても50年、資料の増加と相まってとられた著者の精緻な観察視点は、亀ヶ岡式土器の成立期を扱って、型式学の真髄の一つとも呼べるような業績として本書に結実している。
※『古代文化』第62巻3号(2010年12月、公益財団法人 古代学協会)に掲載されたものを評者・発行元にご了解をいただき転載させていただきました
その他のおすすめ図書について
(本書評が掲載されている『古代文化』第62巻3号はこちらからお取り寄せ可能です)亀ヶ岡式土器成立期の研究 東北地方における縄文時代晩期前葉の土器型式
著書:小林 圭一 著
発行元: 早稲田大学総合研究機構 先史考古学研究所
出版日:2010/10
価格:¥8,382(税込)
目次序 章
第1節 本論の目的と構成
第2節 本論の時間的範囲と型式区分
第3節 大洞B・BC式土器の器種分類
第4節 東北地方の地域区分
第5節 晩期前半の主要遺跡
第1部 大洞B・BC式土器研究の問題の所在
第1章 亀ヶ岡式土器成立前史-瘤付土器の概要-
第1節 研究史
第2節 土器の器種構成と用途
第3節 文様の特徴
第4節 型式と編年-年代的変遷-
第5節 14C年代測定データ
第6節 瘤付土器の分布と他型式との関係
第2章 東北中部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 高瀬山遺跡出土の晩期初頭の土器
第3節 後・晩期の境界をめぐる諸問題
第4節 後期三叉文の成立過程
第5節 大洞B1式の装飾深鉢B類の特徴
第6節 結 語
第3章 東北北部の晩期初頭をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 東北北部の晩期初頭の研究史
第3節 一括性の高い資料の検討
第4節 結 語
第4章 「雨滝式」をめぐる問題の所在
第1節 はじめに
第2節 山内清男氏による大洞B・BC式の設定と再細分
第3節 芹沢長介氏による「雨滝式」の提唱
第4節 「雨滝式」の問題の波及
第5節 曲田?遺跡と八幡遺跡に対する評価
第6節 大洞BC式細別化の動向
第7節 大洞BC式の一括性の高い資料の検討
第8節 結 語
第2部 縄文時代晩期注口土器の研究
第5章 東北北半における縄文時代晩期前葉の注口土器
第1節 はじめに
第2節 研究史
第3節 注口土器の分類と編年
第4節 新井田川・馬淵川流域の注口土器の変遷
第5節 東北北半出土の注口土器の様相
第6節 部位毎に見た系統的変遷
第7節 結 語
第6章 縄文時代晩期初頭注口土器の一様相
第1節 はじめに
第2節 沢山遺跡の概要と注口土器出土の経緯
第3節 沢山遺跡出土の大型注口土器について
第4節 晩期初頭の注口土器C類について
第5節 沢山遺跡出土大型注口土器の編年的位置
第6節 青森平野における晩期前半期の遺跡群
第7節 結 語
第7章 東北中部における縄文時代晩期前葉の注口土器
第1節 はじめに
第2節 宮田遺跡の概要
第3節 宮田遺跡採集の注口土器
第4節 釜淵C遺跡出土の注口土器
第5節 編年的位置の検討
第6節 結 語
第3部 大洞B・BC式土器研究 各論
第8章 大洞B式「ノ字文」の系譜
第1節 はじめに
第2節 「ノ字文」の特徴
第3節 「ノ字文」の系譜とその分布
第4節 他器種の文様との相関性について
第5節 「野脇類型」深鉢の抽出
第6節 結 語
第9章 岩手県曲田?遺跡E?-011住居跡出土土器の再検討
第1節 はじめに
第2節 曲田1遺跡の概要
第3節 E3-011住居跡の様相
第4節 E3-011住居跡出土土器の検討
第5節 考 察
第6節 結 語
第10章 大洞BC式に固有の「入組三叉文高坏」について
第1節 はじめに
第2節 「仙北湖沼地帯」の概要
第3節 「入組三叉文高坏」の特徴
第4節 「入組三叉文高坏」を構成する属性の検討
第5節 「入組三叉文高坏」の年代的変遷
第6節 「入組三叉文高坏」の分布
第7節 「仙北湖沼地帯」に特徴的な土器群
第8節 結 語
第11章 縄文時代晩期初頭に固有の「眼鏡状突起」について
第1節 はじめに
第2節 「眼鏡状突起」が付された土器
第3節 「眼鏡状突起」の消長とその意義について
第4節 結 語
第12章 大洞B2式磨消文様の一類型-「川原類型壺形土器」の文様分析-
第1節 はじめに
第2節 川原遺跡出土の壺形土器について
第3節 川原遺跡出土壺形土器の編年的位置について
第4節 「川原類型壺形土器」の類例
第5節 「川原類型壺形土器」の消長
第6節 大洞B式壺形土器の磨消文様
第7節 結 語
第13章 東海・近畿地方における縄文時代後期後葉〜晩期前半の東北系土器
第1節 はじめに
第2節 東北地方の縄文後期後葉〜晩期前半の概要
第3節 東海地方の主要遺跡の検討
第4節 近畿地方における東北系土器の様相
第5節 結 語
終 章
第1節 大洞B・BC式土器研究の総括
第2節 「雨滝式」についての今日的理解
第3節 大洞B・BC式土器の14C年代測定データ
第4節 今後の課題
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